目次
重度の慢性肩こりの原因と対処方法
概要
肩こりは、日本人の多くの方が悩まされている身体の不具合になります。厚生労働省が行っている国民生活基礎調査によると、2022年では身体の不具合・悩みの中で男女ともに肩こりが二番目に多い結果となっています。
また、2022年以前の調査においては、約30年間にわたって女性では肩こりが一位、男性では肩こりが二位だったのです。
これだけ多くの日本人が身体の不具合として悩まされている肩こりですが、一時的な症状と言うより、慢性的な症状として悩まされるケースが非常に多いです。
継続的な不快感や痛みを伴うことが多く、特に現代のライフスタイルや仕事環境が原因となりやすい、といった特徴を持ちます。
原因
肩こりとは、肩・首まわりの筋肉の拘縮や血行不良による、不快感や凝り感、痛みなどを総称したものになります。
肩こりの原因は多岐にわたりますが、簡単にまとめてしまうと「筋疲労」と表すことができます。僧帽筋や菱形筋など、肩まわりの筋肉が疲労し、血行が悪くなってしまうことで様々な肩こりの症状が出てしまうのです。
肩こりを引き起こしてしまう要因としては主に以下のものが例として挙げられます。
姿勢の悪化
長時間のデスクワークやスマートフォンの使用、テレビ鑑賞などで長時間同じ姿勢を続けていると肩まわりの筋肉は緊張し続けます。
また、現代人は椅子に座って作業するとき、首を前に突き出すような姿勢になることが多く、これも肩や首への負担を集中させてしまうのです。このような持続的な負担が肩まわりの筋肉疲労や血行不良を引き起こしてしまいます。
運動不足
身体を動かすことで、血液が循環され血行を促進させることができます。そのため、運動の習慣がなく、運動不足の人は血行促進の効果を得られず、血行不良になりやすい傾向にあります。
ストレス
ストレスや精神的な緊張は肩こりを引き起こす原因としても知られています。ストレス状態が続くと、交感神経が優位となり、筋肉の緊張状態が続いてしまいます。それによって肩や首まわりの筋肉にも影響を及ぼしてしまいます。
眼精疲労
眼精疲労も肩こりの原因として挙げられます。不規則な生活や強いストレスにより自律神経が乱れてしまうと、目のピントを合わせる筋肉である「毛様体筋」が上手く作用しなくなり、目に疲れが溜まっていきます。
それによる不快感が首や肩まわりの筋肉を緊張させ、結果として肩こりを引き起こしてしまうのです。
医学的要因
頸椎ヘルニア、筋肉疾患、関節炎など医学的な要因によっても肩こりの症状が出ることがあります。
症状
重度の慢性肩こりの主な症状として以下が考えられます。
- 持続的な肩の痛み:特に夜や朝、長時間同じ姿勢を保っているときに痛みが強くなることがあります。
- 首の痛み:肩と同様に首にも痛みやこりが広がることがあります。
- 頭痛:特に後頭部や側頭部に痛みが現れることがある。
- 手や腕のしびれ:肩こりが原因で神経が圧迫されると、手や腕にしびれが生じることもあります。
一般的なアプローチ方法
肩こり改善のための一般的なアプローチ方法としては以下のものが挙げられます。
①姿勢の改善
正しい姿勢を意識し、正しい姿勢で生活することで肩まわりがの過度な緊張を解消します。
②ストレッチ
首や肩まわりの筋肉を伸ばすストレッチを日常的に取り入れることで筋肉の緊張状態を和らげます。
③マッサージ
首や肩まわりをマッサージによってほぐすことで、筋肉の緊張を緩和させます。
④温熱療法
カイロ、温泉、暖かいシャワーなどで筋肉を温め、筋肉の緊張を緩和させます。
⑤冷却療法
炎症を持つ部分に対しては、冷やして痛みを和らげます。
⑥薬物療法
痛みが強い場合は、医師の処方に基づく鎮痛剤や筋弛緩剤の使用するここがあります。
⑦ストレスマネジメント
リラクゼーション、瞑想、適切な休息などによりストレスを軽減します。
これらのアプローチ方法は緊張した筋肉を和らげることで痛みの軽減を狙うものが多く、対症療法的なアプローチである場合が多いです。
肩こりを根本から改善するアプローチについては次のテーマで紹介していきます。
連動性療法の開発チームに聞いてみた「重度の慢性肩こりに対するアプローチ方法」
編集部
「ここからは、連動性トレーニング開発チームの皆さんに、連動性トレーナーが考える『重度の慢性肩こり』に対するアプローチ方法について伺っていきたいと思います。
開発チームの皆さん、よろしくお願いします!」
◯重度の慢性肩こりに対するアプローチ方法
編集部
「肩こりと聞くと、慢性的に悩んでいる方が多く、なかなか治らない、そんな印象を持っている方が多いように感じますが、連動性トレーナーの方は重度の慢性肩こりに対してどのように考えているのでしょうか?」
開発チーム
「はい、肩こりと言うのは多くの方が身体に対する悩みとして抱えている症状の一つだと思います。実際に有訴者率と言って日本人の身体に対する悩みを答えるアンケートでは、2022年以前までの30年以上にわたって、女性の場合はずっと肩こりが1位なんですよね。男性の場合も2位だったりします。
つまり、かなり多くの方が肩こりで悩んでいて、興味関心を持っている方も非常に多いですよね。
一般的に肩こりと言うのは、筋肉の過度な伸張や過度な使用による疲労の蓄積や血行不良が原因であると言われています。そのため、肩こりと聞いてよくある対処方法としては、マッサージやストレッチ、鍼治療や、お風呂に入って温めて血流を良くする、などがあると思います。
ただ、それらのアプローチは対症療法と言いますか、『その場での解決』だと思うのです。
つまり肩こりの根本の原因は解決できていないですし、根本からの解決を目指すのであれば、それらのアプローチだけでは心もとないのではないかと私たちは考えています。
編集者
「ありがとうございます。根本から解決するというお話がありましたが、肩こりの根本原因について聞かせていただけますか?」
開発チーム
「そうですね、そもそもなぜ肩が凝るのか、筋肉疲労が起こってしまうのかと言うことを考えていきたいと思います。
私たちHURECの研究によると、「筋収縮のリレーが正常に行われない状態」になっていることが肩こりの根本の原因であると考えられます。
『筋収縮のリレー』とは何か、まず話していきたいと思います。
動作において強く収縮してメインに使われる筋肉と言うのは関節角度によってリレーのように移り変わっていく構造になっていることがわかっています。
分かりやすい例を挙げるのであれば、肘を屈曲するという動作において、肘が完全伸展している状態から10度、20度と軽く屈曲している時、30度、40度、と少し屈曲が深くなった時、さらに90度を超えて深く屈曲している時とではメインとして使われる筋肉が違うのです。筋肉・骨格から考えると違うべきであるとも言えます。
私たちはこのような関節角度によって使用される筋肉の移り変わりを『筋収縮のリレー』と呼んでいます。そして、この筋収縮のリレーは上半身であれば手先から体幹の筋肉にかけて移り変わっていきます。
筋収縮のリレーが保たれている状態では全身が使えているため、特定の筋肉に過度な負荷がかかることなく、負荷は分散されていきます。ただ、この筋収縮のリレーが正常に行われなくなってしまうと肩こりなどの症状に繋がりやすいです。
例えば、上にある物を取ろうとして、腕の挙上動作を行ったとします。
本来の正しい身体の使い方であれば、肩を挙げる角度によって使う筋肉が移り変わっていきますが、いきなり初動から肩や首周辺の筋肉を使って腕を挙上してしまうと、首や肩周辺の筋肉はかなり多くの時間収縮されていることになります。
簡単に言うと仕事量が増えている状態です。
そうすると、当然の話ですが、首や肩回りは疲労を起こし、慢性的な肩こりへと繋がってしまうのです。
これが私たちが考える肩こりの根本原因となります。」
編集者
「ありがとうございます。では、実際に連動性トレーナーは肩こりに対してどのようなアプローチをするのでしょうか?一般的なアプローチ方法との違いも交えながら教えていただきたいです。」
開発チーム
「慢性疲労した筋肉をマッサージやストレッチ、鍼などで対処することがよくあるかと思いますが、それだけではその時は緩和したとしても、だいたいの場合はしばらく経つと同じように肩が凝ってしまいますよね。
それは、根本原因である『筋収縮のリレーが正常に行われない状態』については何も変わっていないからです。
本来使うべきでない関節角度においても肩まわりが緊張してしまっている状態を慢性的に、長年にわたって続けてきてしまった結果として肩こりになっているため、同じ使い方をしていては症状を繰り返してしまいます。
なのでマッサージなどを行って一次的に緩和したとしても、根本的には治っていかないため、再発を繰り返しているうちに、『肩こりというのは基本的には付き合っていくものだ』と多くの方は思ってしまっているのですよ。
ですが、私たちの考えでは『そんなことはない』と言えます。
肩こりが起こる、つまり肩周辺の筋疲労が起こる根本の原因は動作の仕方、筋肉の使い方にあるため、筋収縮のリレーを取り戻し、本来の身体に合った使い方に戻していくことができれば、特定の筋肉への負担が減り、肩こりが根本的に改善されるのです。
私たち連動性トレーナーは、ー部分に過度な負担のかからない体の使い方に回復させる、戻していくことによって重度の慢性肩こりに対しても緩和させていくことができる技術を持っていると考えています。」
編集部
「開発チームの皆さん、ありがとうございました!」
監修者からのアドバイス
重度の慢性肩こりに効果的だった連動性トレーナーのアプローチ
患者情報
- 年齢 70代後半
- 性別 女性
- 主訴 肩の痛み
- 既往歴 腱板損傷
- 医師の診断 五十肩
- 過去の対処 病院でのリハビリテーション(マッサージ、投薬、物理療法など)
- 動作痛の種類 肩関節の挙上動作
分析とアプローチ
洗濯物を干す時、肩が痛くて反対側の手で腕を持ち上げながら手を上げている状況でした。また、肩関節屈曲、外転の連動性を検査したところ肩を耳に近づけるような動作で上腕を挙上しており連動性の低下が見られた。連動性が低下している動作にを介入したところ痛みの軽減がみられた為、治療を開始。
その結果、肩を耳を近づけながら挙上していた動作も軽減し負荷分散により肩の痛みも軽減。反対側の手で腕を持ち上げることなく腕の挙上ができるようになった。
▷アプローチ例①
上腕二頭筋を遠位から近位の方向で手技を繰り返す
▷アプローチ例②
抵抗を加えた状態での肩関節水平屈曲動作を繰り返す
編集者
山田紘暉 Hiroki YAMADA
理学療法士/HUREC認定連動性トレーナー
1999年愛知県大府市生まれ。名古屋大学医学部保健学科理学療法学専攻卒業後、主に市民ランナーを対象とした膝痛根本改善トレーナーとして活躍。大学時代から、ランナー向けに発信してきたinstagram アカウントやまちゃん/山田紘暉|マラソントレーナーは、5400人にフォローされる人気アカウント。中学3年生の時に、腰椎分離症で中学校最後のレースを棄権、続く高校時代はシンスプリント、股関節・臀部の怪我などで、一度も満足な練習が積めず、記録を伸ばせなかった。そんな過去から、怪我なくスポーツを楽しみチャレンジできることに大きな価値を感じ、名古屋大学にて理学療法士を志す。理学療法を基礎としながらも、怪我の根本改善には、動作分析や動作改善が必須と考え、HUREC認定連動性トレーナーの資格も取得。在学中から、学生トレーナーとして仕事を初め、卒業と同時にフリーランストレーナーとして名古屋を拠点に活動。
監修者
城戸瑞穂 Mizuho KIDO
鍼灸師/HUREC認定連動性トレーナー
1993年生まれのA型。愛媛県出身。医療法人いずみ会阪堺病院内トレーニングジムSCAにて、スポーツ選手・ジュニア年代に対して障害予防、パフォーマンスアップ、動作指導、を経験。在学中より小・中・高などの野球チームとの契約を複数獲得。専門学校卒業後2020年より野球専門のフリーランストレーナーとして独立。2022年プロ野球独立リーグ愛媛マンダリンパイレーツにて専属トレーナーを務めプロアスリートを年間を通してサポート。現在は、大阪・兵庫・愛媛など様々な場所クライアントを持つフリーランストレーナーとしての活動に加え、医療従事者・トレーナー育成にも注力し現在に至る。先天性連動の技術・知識を通じて『自分自身で身体の機能(痛み・身体動作)を回復・改善・学習』できるようアスリート向けに出張・オンライン型で活動している。