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変形性膝関節症ってどうやって治すの?

2023.10.15

「変形性膝関節症」とは

概要

変形性膝関節症(Osteoarthritis of the knee、以下、膝OAと表記)は、膝関節の軟骨が摩耗または劣化することで引き起こされる疾患です。最も一般的な関節症の一つであり、特に中高年以降の人々に多く見られます。

原因

膝OAの一般的な原因には以下のものが挙げられます。

  • 加齢:年齢とともに関節軟骨の摩耗が起こる
  • 過度な使用:スポーツや職業など、関節に繰り返し負荷がかかる活動
  • 遺伝:家族歴が関連する場合もある
  • 肥満:体重が増えることで膝への負担が増大する
  • 既往歴:骨折や靱帯損傷、半月板損傷などの外傷、化膿性関節炎などの後遺症として発症することもある。

主な症状

変OAの主な症状には以下のようなものが挙げられます。

・痛み

膝の痛みは膝OAの最も一般的な症状です。初期段階では、運動後や一日の終わりに痛みを感じることが多く、症状が進行すると休息時や夜間でも痛みを感じるようになる場合があります。

・関節の腫れ

関節炎を伴う場合や関節の中で液体がたまることで、関節部分が腫れ上がることがあります。

・硬直感

特に起床時や長時間同じ姿勢でいた後に、関節が固く感じることがあります。この硬直感は通常、数分で和らぐことが多いです。

・運動制限

関節の動きが硬くなったり、関節の可動域が狭まることで、歩行や階段の昇降などの動作に制限が生じる場合があります。

・クリック音やこすれる音

関節を動かすときに音がすることがあります。これは関節の表面が滑らかでなくなっていることを示します。

・関節の変形

軟骨が破壊され骨同士が接触すると、骨が反応して成長し変形することがあります。この変形は、進行した症状の一つとなります。

・筋力の低下

関節周囲の筋肉が萎縮し筋力が低下することがあります。これは、痛みを避けるために特定の動作をしなくなってしまうことが原因の場合が多いです。

以上の症状は、変形性膝関節症の進行度や患者の個体差により、その強度や出現の仕方が異なることがあります。症状が現れた場合は、専門の医師に診てもらうことが重要です。

診断方法

膝OAの診断は臨床的な症状や身体的検査、画像検査を基に行われます。

身体検査

  • 膝内側の圧痛や腫脹の有無、O脚変形の有無を確認
  • 膝関節の可動域
  • 歩行時の異常や筋肉の萎縮を観察します。

画像検査

  • X線:関節間隙の狭窄(軟骨の減少)、骨の変形や骨棘(骨の突起)の出現などの変化を確認するために使用されます。
  • MRI(磁気共鳴画像診断):軟骨の損傷、骨の変形、関節の炎症、腱や靭帯の異常を詳しく視覚化できます。X線では確認できない初期の変化や組織の詳細な情報を得るために使用されることもあります。

重症度分類

膝OAの重症度分類にはKellgren-Lawrence分類(K-L分類)が一般的に幅広く用いられています。

Kellgren-Lawrence (K-L) 分類

  • greade0:正常。放射線学的に変化は見られない
  • greade1:疑念。関節隙間の僅かな狭窄や骨棘の可能性が疑われる。
  • greade2:軽度。明確な骨棘が存在するが、関節隙間は正常。
  • greade3:中等度。多数の骨棘、関節隙間の明らかな狭窄、軟骨の一部喪失が見られる。
  • greade4:重度。関節隙間の大幅な狭窄や消失、多数の大きな骨棘、関節の硬直、骨の硬直、および骨脱臼が見られる。

一般的治療法

治療の目的は、痛みの管理、関節の機能の維持・改善、そして日常生活の質の向上です。

保存療法

・体重の管理

過体重は膝に過度なストレスを与えるため、減量が推奨されます。目標は標準体重の維持や少なくとも5-10%の体重減少を目指します。

・装具による膝のサポート

装具は、関節の安定化や適切なアライメントの維持に役立ちます。特定の靴や中敷きは、歩行時の衝撃を減少させるのに役立ちます。

・薬物療法

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や鎮痛薬で痛みや炎症を緩和させます。重症の場合、ステロイドの関節内注射やヒアルロン酸注射が考慮されることがあります。

リハビリテーション

・筋力強化

膝周囲の筋力低下がみられるため、大腿四頭筋やハムストリングスを強化します。

・関節可動域の改善

関節可動域を維持・向上させることが目的です。痛みを感じない範囲で行うことが重要。

・水中リハビリ

水中でのエクササイズは、関節に負荷をかけずに筋力を鍛えることができます。

・体幹強化

体幹部の安定によって、膝への負担を減少させます。

生活指導

膝OA患者の生活指導は症状の緩和、関節機能の維持・改善、さらなる障害の予防を目的としています。

・体重の管理

余分な体重は膝への負荷を増加させるため、体重の管理は非常に重要です。

・適切な運動

膝関節の筋肉を強化するための運動やストレッチは、関節のサポートを強化し痛みを緩和します。水中運動や歩行、サイクリング、太極拳など、低強度の運動を行い、過度な運動やジャンプ、急な動きは避けるように指導します。

・関節の保護

膝に過度な負荷をかけないよう、荷物の持ち方や持ち上げ方の指導、長時間の立ち仕事やしゃがみっぱなしは避けるよう指導します。

・適切な靴の選択

足と膝への衝撃を吸収するクッション性のある靴や中敷きの使用が推奨されます。ハイヒールは避けるよう指導します。

・日常生活の工夫

椅子やトイレの高さを適切に調整することで、立ち座りの際の膝への負担を減らします。また、階段の昇降時は手すりを利用するよう指導します。

定期的な医療チェック

疾患の進行や症状の変化に応じて、治療方針を見直すために定期的な診察を受けることが重要です。

手術療法

・関節鏡手術

膝の変形が進行していない、初期の膝OAに対して行われる治療法。破損した軟骨や関節内の異物を取り除くことで、痛みの軽減を図ります。

・高位脛骨骨切り術

膝関節の変形や不安定性を改善するため、脛骨の上部を切断し、その角度を変えて固定する。これにより、膝のアライメントを正常化します。仕事やスポーツを積極的に行っていきたい場合に行われるケースが多いです。

・人口膝関節置換術(単顆置換、全置換)

変形した膝関節の表面を薄く削り、人工関節に置き換えることで関節の機能を回復させ、痛みの軽減を図ります。膝痛の改善に大きな効果が期待できます。膝関節の変形の範囲によって単顆置換と全置換があります。

連動性トレーニングの開発チームに聞いてみた「変形性膝関節症の検査と改善方法」

編集部

「ここからは、連動性トレーニング開発チームの皆さんに、連動性トレーナーが考える変形性膝関節症の原因と改善方法について伺っていきたいと思います。

開発チームの皆さん、よろしくお願いします!」

◯変形性膝関節症の検査と改善方法

編集部

 「それでは、まず連動性トレーナーの変形性膝関節症への考え方を聞かせて頂きますか?」

開発チーム

 「そうですね。変形性膝関節症というのは、基本的に体重や加齢などを始めとした長年にわたる影響から膝の軟骨が擦り減ってしまうことで、膝に強い痛みを感じるような疾患となります。この辺は、一般論と基本的には変わらないと思います。

編集部

「ありがとうございます。検査方法など、より具体的なことについても聞かせて頂けますか?」

開発チーム

「はい。まず変形性膝関節症の患者様に対して連動性トレーナーが介入する時には、3つ大切なことがあります。

  1. 器質性疾患と機能性疾患を分けて理解すること
  2. 連動性トレーナーが改善できるのは機能性疾患
  3. 機能性疾患=連動性の低下
  • 分析では動作痛を見る
  • 部分ではなく全体
  • 負荷分散

これらを順番に話していきます。

器質性疾患と機能性疾患を分けて理解すること

 変形性膝関節症を含む、全ての疾患は、器質性疾患と機能性疾患に大別ができます。器質性疾患と言うのはレントゲンやCT、MRIといった医療機器によって画像診断されるものを指します。つまり医者によって診断される疾患になります。

 一方で機能性疾患というのは、画像診断では映らず医師の診断としては明確な原因を特定できないけれども、実際には痛みがある状態を指します。

連動性トレーナーが改善できるのは機能性疾患

 連動性トレーナーはじめ多くのトレーナーは基本的に器質性疾患に対しての介入はできません。器質性疾患と言うのは基本的に医師のみが手術によって介入できる領域であると考えています。また、変形性膝関節症の所見があるにもかかわらず、痛みが全くない人も存在していますし、一方では変形性膝関節症やその他膝に関する疾患の所見はないが膝の痛みで悩んでいる人も実際にいるのです。

 そのように考えると、私たちトレーナーが変形性膝関節症の方にどう介入していくかと言いますと、やはり機能性疾患になるわけです。機能性疾患を治すことによる痛みの軽減、改善に対して私たちトレーナーは力になることができます

機能性疾患=連動性の低下

 私たち連動性トレーナーは、機能性疾患が起こるのは全身の連動性が低下していることが原因と考えています。どういうことかと言いますと、痛みが生じてしまう原因はある一部分に負担が集中するような身体の使い方を繰り返してしまうことであると考えられますが、それは連動性が低下したことで動作に参加する関節・筋肉の数が少なくなっていることが要因となっているのです。

 よって変形性膝関節症の患者様を診る時には全身の連動性という観点から検査・分析をしていきます。連動性を向上させることで機能性疾患を改善させ痛みを無くしていくと言う事になります。

分析では動作痛を見る

 私たち連動性トレーナーは、変形性膝関節症と言う診断を基本情報として持ちつつも実際に検査・分析していくのは基本的に痛みが生じている動作になります。つまり、「動作痛検査」によって痛みの生じている原因を分析します。私たちは全身を8つの連動性グループに分類していますが、実際に痛みが生じている動作を見ることで、どの連動性グループが低下しているのかと見ていくのです。変形性膝関節症という診断にとらわれ過ぎずに、むしろ私たちトレーナが強い領域である「機能性疾患」、つまり連動性の低下を評価していく必要があります。

例えば、膝を伸ばすと痛いのであれば、膝を伸ばす動作に対して低下している連動性グループはどこかと見ていきます。そして、痛みの状態がある程度回復していくとケンケン動作や歩行、走行動作を場合によっては見ていくことで全身が連動した状態に回復させていきます。

「部分」ではなく「全体」

 変形性膝関節症と診断されているということは、軟骨の擦り減りや骨の変形が起こっているということになりますが、ではそもそもなぜそのような状態になってしまったのかと考えると、長年の生活習慣の中で膝に負担をかけ続けてしまったからと考えることができます。つまり、膝に負担が集中してしまうような部分的な身体の使い方によって変形性膝関節症と診断されるまでになってしまったと考えるわけです。膝に負担が集中している、膝を酷使しているということは言い換えると、身体のどこかで使えていない部分=連動性が低下している部分があると言えますよね。

 よって、連動性トレーナーが行う検査・分析においては、患部などの「部分」にとらわれ過ぎず、「全体」を見ることが大切なのです。そして身体の使い方を全身性の動作に回復させることで減痛を目指していきます。

負荷分散

 負荷とは、筋肉や関節などへの過度な部分負担のことを示しますが、部分的な動作から全身を使った動作に回復していくことで負荷は全身に分散されるのです。負荷が全身に分散されると、膝にかかる負荷が軽減するので痛みを軽減させることができます。

 以上より、連動性トレーナーが行う治療を一言で表すのであれば、「連動性を上げて全身性運動を回復させることで負荷を全身に分散させること」と言えます。従って膝など患部やその周辺にアプローチすることは少ないという特徴があります。

 最後に、私たちトレーナーは機能性疾患のプロなんだと、そういうスタンスで疾患に向き合っていくことで多くの変形性膝関節症の減痛であったり跛行を改善していくと言う事に貢献できると考えています。万能ではありませんが、力になれる範囲は少なくないとは思っています。」

編集部

「開発チームの皆さん、ありがとうございました!」

監修者からのアドバイス

「変形性膝関節症に効果的だった連動性トレーナーのアプローチ」

患者情報

  • 年齢 70代
  • 性別 女性
  • 主訴 階段を降りるとき膝が痛い
  • 既往歴 脊柱管狭窄症
  • 医師の診断 両側変形性膝関節症
  • 過去の対処 20年前から階段を降りるときに膝痛あり。医師に変形性膝関節症と診断されるも、手術は選択しなかった。依頼、手すりを持たずに階段を降りられなくなった。
  • 動作痛の種類 階段を降りる際、左足に体重がかかると左膝が痛い。

分析とアプローチ

階段昇降動作を観察した際、特に降りるときに左膝が大きく外側に逃げる様子が見られた。足関節背屈動作の自動運動での可動域が低下していることが見受けられたため、膝関節と足関節の連動性が低下していることで膝への負担がかかっていると考え、前脛骨筋をはじめとする下腿に対して手技および連動性トレーニングを実施した。その結果、階段を降りる際、左足の背屈角度が大きくなっても体重を支えることができ、膝がまっすぐ屈曲するようになった。

・アプローチ例①

  前脛骨筋を膝から足首の方向へ手技

・アプローチ例②

  足関節の背屈運動を繰り返す

・アプローチ例③

  膝伸展を行った状態で、足関節の背屈運動

 

 

編集者

山田紘暉 Hiroki YAMADA

理学療法士

HUREC認定連動性トレーナー

 1999年愛知県大府市生まれ。名古屋大学医学部保健学科理学療法学専攻卒業後、主に市民ランナーを対象とした膝痛根本改善トレーナーとして活躍。大学時代から、ランナー向けに発信してきたinstagram アカウントやまちゃん/山田紘暉|マラソントレーナーは、5400人にフォローされる人気アカウント。中学3年生の時に、腰椎分離症で中学校最後のレースを棄権、続く高校時代はシンスプリント、股関節・臀部の怪我などで、一度も満足な練習が積めず、記録を伸ばせなかった。そんな過去から、怪我なくスポーツを楽しみチャレンジできることに大きな価値を感じ、名古屋大学にて理学療法士を志す。理学療法を基礎としながらも、怪我の根本改善には、動作分析や動作改善が必須と考え、HUREC認定連動性トレーナーの資格も取得。在学中から、学生トレーナーとして仕事を初め、卒業と同時にフリーランストレーナーとして名古屋を拠点に活動。

 現在は身につけたトレーナーとしての技術を自分の身体にも実験し、一切の怪我を克服し、市民ランナーとしてもフルマラソンに挑戦中。自己ベストは2時間57分7秒。

監修者

田村和也 Kazuya Tamura

理学療法士

HUREC認定連動性トレーナー

1999年京都府京都市生まれ、神奈川県在住。

幼稚園のときに水泳を始め、小学生から高校生まで選手として競泳競技に取り組む。

高校生時代に身体の仕組みに興味をもち、神戸大学で理学療法学を専攻。大学4年生のとき、「つづけるをささえる」をモットーにオンライントレーニングのサービスで起業。

大学卒業後は会社代表と大学院生の2足のわらじを履いて活動。神戸大学大学院では「子どもの友人関係と身体活動」についての研究を行う。

現在、身体理論の研究を行う 株式会社HUREC の養成講座のマネージャーおよび、歩行専用トレーニングサービスwalkey のアドバイザーを務める。これらの経験をもとに、医療従事者、治療家・トレーナー・学生の育成に力を入れている。

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