年齢別のベテランツアーを戦う竹中亮馬選手には、長く消えない悩みがありました。試合を勝ち上がるほど足がつって、最後まで戦い切れない。5年ほど前には腰のヘルニアで「立っていられないほどの痛み、30分が限度」という状態に陥りました。治療院、鍼、その分野で有名な先生——何をしても、しびれと突っ張りは残ったまま。
本記事では、HURECで自分の個体差——骨格タイプ(始点6・力点3)——を知り、「気づいたら、どこにも不安がない」状態でプレーできるようになり、2026年に40歳以上の日本代表としてITF世界マスターズ選手権(ポルトガル)へ出場するまでを、本人の言葉で紹介します。
※本記事は一選手の個人的な体験・感想です。結果には個人差があります。痛み、しびれ、けいれん、受傷直後の症状がある場合は、まず医療機関での確認を優先してください。


竹中 亮馬(たけなか りょうま)|テニス/右利き
44歳(2026年9月現在)。東京都出身。テニス歴 約21年。八王子ファミリーテニスカレッジ(テニスユニバース)ヘッドコーチ。コーチをしながら、年齢別のベテランツアーを選手として戦う。
【主な実績】
- 全日本ベテランテニス選手権 35歳以上 男子ダブルス 優勝(2022年)
- 全日本ベテランテニス選手権 40歳以上 男子ダブルス 優勝(2024年)
- 東京オープン・関東オープン ベテランの部 優勝(2024年)
- ベテランJOPランキング 最高1位/ITF世界マスターズランキング 最高4位
- ITF World Tennis Masters Tour MT1000 山梨 40歳以上 男子ダブルス 優勝(2026年/ペア:比嘉明人)
- ITF世界マスターズ選手権 2026(リスボン)40歳以上:国別対抗戦(Tony Trabert Cup)に日本代表として出場/個人戦 男子ダブルス ベスト8(ペア:比嘉明人)
自分の個体差を知る前、どのような課題を抱えていましたか?
ずっと悩みとしてあったのは、足のけいれんです。試合を勝ち上がれば勝ち上がるほど相手のレベルは上がり、体の負荷も大きくなる。その中で、ほぼ足がつって終わることが非常に多くて、最後まで戦い切れない。戦えたとしても大きなダメージを受けたまま、次の日のパフォーマンスが落ちる。勝ち上がっていかなければいけないトーナメントの中で、これは本当に深刻な悩みとして、ずっと持っていました。
もうひとつが腰です。5年ほど前、腰が怪しいと感じながら無理をして試合に出たところ、立っていられないほどの痛みになり、30分が限度、という状態になってしまいました。
その後も試合は回らなければいけない。足がつる。長時間になると腰と足のしびれが出る。そういう不安を抱えながらプレーしていると、気持ちの面でも弱気になる。満足にパフォーマンスを出せない悩みを、ずっと持ち続けている状況でした。
これまでは、どのように取り組んできましたか?
足のけいれんについては、水分補給をする、ストレッチでほぐす、ケアをする、筋力を上げる——そういうことで改善するのではないかと、自分なりにやってきました。でも、ほぼ変わりませんでした。
腰については、いろいろな治療院に行きました。カイロプラクティック、整骨院で超音波や電気のアプローチ、鍼、その分野で有名な先生を紹介してもらって通ったこともあります。それでも完治には至らず、足のしびれと突っ張りは、ずっと残ったままでした。
個体差に合わせたトレーニングを本格的に始めようと思った理由は?
ヘルニアのあとも、しびれと突っ張りを抱えたまま試合を回り続けていました。このまま、満足にパフォーマンスを出せない状態で続けるのではなく、もっと良くなりたい。その気持ちが、まずありました。
きっかけは、ダブルスのパートナーでもある比嘉明人選手の紹介でした。比嘉選手もHURECで自分の個体差に取り組んでいて、その紹介で、個体差(骨格タイプ)に基づくトレーニングを体験させてもらいました。そこで、柔軟性や体の動きの変化を自分の体で感じることができて、興味を持っていました。
そうした中でHURECのトレーナーの方に相談して、自分の個体差に合わせたトレーニングで見てもらうことになりました。続けていたら、だんだん改善していったんです。しびれも、気づいたらなくなっていた。突っ張りもなくなっていた。それに伴って、気づいたら足がつらなくなっていた。
体の変化をプラスとして実感できるようになって、不安がなくなり、自分自身に可能性を感じるようになった。だから、本格的に取り組むことを決めて、HURECのアスリート向けプログラムに参加しました。それを現在まで続けています。
実際に取り組んでみて、どのような変化がありましたか?
一番最初は、しびれと突っ張り、そして疲労がたまると脚の付け根が痛くなって動くのがつらい、という状態を相談するところから始まりました。まず「どの動きなら痛みなくできるか」をチェックして、その中で今できる、自分の個体差に合ったエクササイズから始める。少しずつ可動域が上がり、痛みの出る範囲が少なくなるにつれて、プログラムが変わっていく。こまめに話を聞いてもらいながら次のアプローチに進めたのが、非常に効果的だったと思います。
私がやったことは、提案されたエクササイズを、ひたすら毎日やるだけです。それを続けていると「あれ、前に痛かったところが痛くない」「動くようになっている」と気づいて、次のステップに進む。その繰り返しで、気づいたら「どこにも不安がない状態でプレーできている」。半年くらいで、そうなっていました。
パフォーマンスで一番大きかったのは、足がつらなくなったことです。筋トレをしたとか、特別に気をつけたとか、何もしていないのに、気づいたら全然つらなくなっていた。体の疲労感も前より少ない。効率よく力が出せて、負荷が分散できているのだと思います。
もうひとつ、意識していないのに、ショットのスピードが上がっているんです。以前と同じ出力、同じパワー感で打っているのに、出ていく力が上がっている。逆に言えば、以前と同じ球を打とうとしたときに、少ない力、少ないエネルギーで出せるようになった。だから体への負荷も少なくなって、プレーに余裕が出てきました。
メンタルも変わりました。足がつる、痛い、苦しい——試合中にそういう意識があると、集中しきれない。戦術や相手の状況、自分の状況を冷静に見られなくなる場面が出てくる。それが、余裕ができたことで「これもできる、あれもできる」と、思考自体がプラスになった。安心してプレーできて、前向きな思考で試合に臨めるようになりました。
ずっと消えなかった足のけいれんと腰の不安を、なぜ今回は乗り越えられたのだと思いますか?
自分の個体差を知れたことが、非常に大きかったです。いろいろな疑問が解決しました。
私は「始点6・力点3」というタイプでした。力点3は、体の前で、プッシュ型——肘を曲げる動作で力を発揮するタイプです。私はテニスで打つとき、本当に「手で前に押しながら飛ばす」という感覚で、ずっとやってきました。
ただ、いろいろなプレーヤーのYouTube動画を見たり、他のコーチに話を聞いたりすると、「打つときはもっと引きながら——左手を引きながら右手を出していく」「足をもっと蹴って打つ」といったアドバイスをもらう。それを取り入れてやってみても、しっくりこなかったんです。
自分のタイプを知ったことで、「自分の感覚は間違っていなかった」と実感できました。取り組みに迷いがなくなった。しかも、アドバイスをくれた人の中で同じくHURECで個体差に取り組んでいる方のタイプを聞いてみると、足のアドバイスをくれた人は下半身のタイプ、「左手を引け」と言う人は引くタイプだった。それぞれの感覚が、それぞれの個体差につながっている。びっくりしましたし、腑に落ちました。より信頼できるようになって、これからも迷いなく取り組んでいこう、という気持ちになりました。
今後の目標を教えてください。
これまでは全日本選手権の優勝を目標にしてきました。今年、日本代表として世界選手権に臨んで、世界の壁を非常に感じました。日本で勝つ以上に、やるべきことがはっきりと見えた。逆に言えば、まだまだ自分にできること、上に上がれることがあると感じています。
来年も世界選手権の日本代表を目指しつつ、国内では全日本選手権の優勝、自分が出ているカテゴリーのトップを目指して動いていきます。担当のトレーナーの方とトレーニングの計画も相談しながら練っていて、すでに1年後に向けて動き出しています。

最後に、同じように悩んでいるアスリートへメッセージをお願いします。
アスリートにとって、怪我は切っても切り離せないものだと思います。私自身、これまでは怪我をしたら治療院に行って治す——つまり「マイナスをゼロに戻す」ことをずっと繰り返してきました。でも、ゼロに戻しただけなので、また同じことを繰り返す。それを繰り返すうちに、次に向かうポジティブな思考が少しずつ削られていく。戦えないし、戦えても自分の満足いくパフォーマンスが出せない。そういうことが多かったんです。
自分の個体差に合わせて取り組むことで、今の私は「マイナスからプラス」に変わっています。これは気持ちの面でものすごく大きい。ネガティブで不安なメンタルから、「もっとこれもできるかもしれない」「やれるかもしれない」と、自分への可能性、期待を持てるようになりました。
もし今、不調や怪我で悩んでいる方がいたら、諦めないでほしい。不調があるから仕方ない、と自分の可能性を狭めないでほしい。自分はまだプラスになる可能性を秘めている。あとは、そういうものにいかに出会って、自分が踏み出せるか。私は自分の個体差——体がどう動くのか——を知ったことで、見える世界、目指せる自分の世界を変えてもらいました。もう一度本気で競技に向き合いたいなら、まずは自分の体がどう動くのかを知るところから始めてみてほしいと思います。
よくある質問
試合の後半になると足がつるのは、水分や筋力の問題ですか?
水分・栄養・筋力が要因になることはありますが、それらを整えても繰り返す場合、原因が別のところにあることが少なくありません。人の体は生まれ持った骨格タイプ(個体差)によって、力の出し方が一人ひとり違います。自分のタイプに合わない力の出し方を続けていると、同じプレーでも特定の部位に余計な力がかかり続け、後半に負荷が集中しやすくなります。竹中選手の場合も、特別なケアや筋トレを増やしたのではなく、自分のタイプに合った動きを積み重ねる中で「気づいたら足がつらなくなっていた」と語っています。まず自分の体がどう力を出すタイプなのかを知ることが、出発点になります。(けいれんが頻繁に起こる、しびれや痛みを伴う場合は、まず医療機関での確認を優先してください。)
どのくらいで変わりますか?試合を回りながらでも取り組めますか?
人によって違うので、同じ期間で同じところに着くとは言えません。竹中選手は約半年で「どこにも不安がない」と感じるところまで来ましたが、どれだけずれていたか、どれだけ長く続けていたかで、戻るまでの道は変わります。HURECのアスリート向けプログラムでは、最初の1〜2ヶ月で個体差の仮判別と競技動作の分析を行い、その後、ウォーミングアップ・トレーニング・ケアを自分のタイプに合った形へ移行していき、6ヶ月後に判別確定を目指していきます。体には長く続けた動きを「いつもの状態」として保とうとする働きがあるため、一度で変えるものではなく、数ヶ月かけて戻していく前提で組んでいます。日々の練習や試合を止める必要はなく、並行して進めます。竹中選手も試合を回りながら、提案されたエクササイズを毎日続ける形でした。変化を感じにくい時期があることも、疲労が重なれば違和感が戻ることもあります。怪我をしない体は作れません。作っていけるのは、怪我をしづらい体です。合うか合わないかは、ご自身で確かめて、ご自身で決めていただければと思います。痛みや症状がある場合は、医療機関で状態を確かめたうえでご相談ください。
誰でも同じように変化しますか?
変化の内容や期間には個人差があり、同じ結果を保証するものではありません。竹中選手の場合は、痛みなくできる動きの確認から始め、可動域や痛みの範囲の変化に合わせてプログラムを更新しながら、約半年で「どこにも不安がない」状態に至りました。HURECのアスリート向けプログラムでは、始点・力点の判別と競技動作の分析をもとに、その選手固有の身体特性に合わせて取り組みを組み立てます。痛みや症状がある場合は、医療機関での確認を優先したうえでご相談ください。
取材・編集情報
取材協力
竹中亮馬(テニス選手・コーチ/八王子ファミリーテニスカレッジ)
取材・構成
HUREC編集部
研究監修:伊藤龍平(いとう たっぺい)
株式会社HUREC 代表取締役。テニス競技出身、テニスコーチ歴約20年。医師・理学療法士・バイオメカニクスの専門家との共同研究をもとに、骨格の個体差(16タイプ/始点理論)に基づく連動性トレーニング・連動性療法を開発。延べ2,000名以上を指導。
医療監修:高村 武光(たかむら たけみつ)
株式会社HUREC 講座運営事業部マネージャー。高校時代に脊椎分離症を経験し、リハビリをきっかけに医療の道へ。森ノ宮医療大学で鍼灸師(国家資格)を取得。サッカー・ソフトボール・テニス・パデルなど複数競技の日本代表を含むアスリートのトレーナーとして活動する一方、変形性股関節症・膝関節症など高齢者の症状にも対応。医療専門職の育成も行う。
【取得免許】鍼灸師(はり師・きゅう師)/HUREC認定連動性トレーナー

