目次
はじめに
以前に足首を捻挫してから、テーピングをしないと試合に出るのが怖い。
テニス肘の痛みが気になり、練習や試合のたびに肘へテーピングをする。
怪我を経験したアスリートであれば、テーピングやサポーターを使った経験がある方も多いのではないでしょうか。
実際、テーピングやサポーターは、怪我をした直後の固定や、競技復帰時の保護など、状況によって重要な役割を持っています。足関節捻挫では、ブレースやテーピングなどの外部サポートによって、その後の捻挫の発生リスクが低下したとする研究もあります。
そのため、HURECでも「テーピングやサポーターを使わないほうがいい」と考えているわけではありません。
一方で、「不安だから、とりあえずサポーターをつけておく」「怪我を予防したいから、とりあえずテーピングをしておく」という状態が続いているのであれば、一度その使い方を考えてみてもよいかもしれません。
HURECでは、テーピングやサポーターは必要な時期には使いながらも、最終的には外部からサポートしなくても、自分の体で負荷を分散して競技に取り組める状態を目指すことが大切だと考えています。
そのときに重要になるのが、「その人の骨格にとって、どのような姿勢や動きが自然なのか」という個体差の視点です。
HURECでは、人によって骨格が違えば、その人にとって自然な姿勢や動きも異なると考えています。全員に同じ「良い姿勢」「良い動き」を当てはめるのではなく、その人の骨格に合っているかを見ていきます。
この記事では、テーピングやサポーターの役割や予防効果に関する研究知見を整理したうえで、HURECが研究してきた「骨格の個体差」「自然な動き」「全身の連動」という視点から考えていきます。
この記事の要点
- テーピングやサポーターは、怪我の固定や保護に必要な場面があります。
- 一部の怪我では予防効果も報告されていますが、効果は怪我の種類や使用する場面によって異なります。
- HURECでは、骨格が違えば、その人にとって自然な姿勢や動きも異なると考えています。
- 必要な時期には外部サポートを使いながらも、最終的には自分に合った動きで全身に負荷を分散して競技できる状態を目指します。
テーピングやサポーターについて
怪我の固定や保護に必要になる場面がある
テーピングやサポーターには、関節の動きを制限したり、外部から固定・保護したりする役割があります。
たとえば足関節捻挫では、ブレースやテーピングなどの外部サポートによって捻挫の発生を減らしたとする研究があります。
2018年のシステマティックレビューとメタ解析では、高校・大学・プロレベルのアスリートを対象とした研究をまとめた結果、ブレースを使用した選手では、使用しなかった選手と比較して足関節捻挫のリスクが低下していました。
また、2010年のシステマティックレビューでは、過去に足関節捻挫を経験した選手において、ブレースやテーピングによる再発予防効果が報告されています。
つまり、「テーピングをしているから良くない」「サポーターを外すことが正解」という単純な話ではありません。
強い捻挫をしてしまった直後の固定や、怪我をしているものの十分な休養期間を取れず、どうしても試合に出場しなければならないときの保護など、必要になる場面があります。

効果は、怪我の種類や使用する場面によって異なる
一方で、テーピングやサポーターを「つけておけば、どんな怪我でも予防できる」というわけではありません。
足関節捻挫のように予防効果が報告されているものがある一方で、すべての怪我や関節で同じような効果が確認されているわけではありません。
そのため、テーピングやサポーターは、つけること自体が良い・悪いのではなく、目的や怪我の状態に応じて使うものと考える必要があります。
では、怪我をした直後の時期を過ぎても、「不安だから」「予防のために」と習慣的に使い続けている場合は、どのように考えればよいのでしょうか。
ここからは、HURECが研究してきた骨格の個体差という視点から考えていきます。
HURECの研究チームに聞いてみた「テーピングやサポーターに頼りきりになっている人へ」
編集部
テーピングやサポーターを使いながら競技を続けているアスリートは多いと思います。
HURECでは、テーピングやサポーターについてどのように考えていますか。
研究チーム
まず最初にお伝えしたいのは、テーピングやサポーター自体が良いとか悪いとか、そういうことを言いたいわけではないということです。
大切なのは、その使い方だと思っています。
場合によっては、すごく必要です。
たとえば、強い捻挫をしてしまった直後に固定するためのテーピング。
あるいは、膝を少し痛めてしまったけれど、十分に休む期間が取れず、どうしても試合に出場しなければならないときに、患部を保護するためにつけるサポーター。
そういったものは、患部の保護に役立つ場合があると考えています。必要な場面では、怪我の状態を踏まえて使用を判断することが大切です。
一方で、
「不安だから、とりあえずサポーターをつけておく」
「怪我の予防のために、とりあえずテーピングをしておく」
という考え方については、100%それでいいとは私たちは思っていません。

編集部
それは、なぜでしょうか。
研究チーム
HURECでは、人の体には本来、何らかの先天的な疾患などがない限り、サポーターやテーピングをしなくても、全身の関節や筋肉を連動させながら、体に加わる負荷を分散する機能が備わっていると考えています。
ただし、そのときの自然な姿勢や動きは、全員同じではありません。
AさんとBさんでは骨格が違います。骨格が違えば、その人にとって自然な立ち方や動き方も異なるとHURECでは考えています。
つまり、その人の骨格に合った自然な動きの中で全身が連動することで、一つの関節や筋肉だけに負荷を集めにくくするという考え方です。
私たちがその一つの例として長年見てきたのが、低年齢の子どもです。
小さな子どもは、飛んだり、跳ねたり、転んだり、ぶつかったりします。
もちろん、転んですりむいたり、ぶつけて痛がったりすることはあります。
その一方で、低年齢の子どもの動きを見ていると、一人ひとりの自然な立ち方や動き方がそれぞれ違うことが分かります。HURECでは、その違いには骨格の個体差が関係していると考えています。
それでも、その子にとって自然な動きの中で、全身の関節や筋肉が協働し、連動して動いていることが多いと捉えています。
その結果、体に加わった負荷を全身に分散しています。
そして私たちは、アスリートというのは、まさにこの「自分にとって自然な動きの中で、負荷を全身に分散する機能」を高い状態に保つ必要がある人たちだと考えています。
編集部
その「全身で負荷を分散する動き」と、骨格の個体差はどのように関係しているのでしょうか。
研究チーム
私たちは長年、体の動作や骨格の個体差について研究してきました。
その中で研究の参考として見てきたのが、低年齢の子どもと、トップ・オブ・トップのアスリートです。
HURECでは、この2つには共通する部分があると考えています。
それが、その人の骨格にとって自然な姿勢や動きが保たれていることです。
ここで大切なのは、
「良い姿勢はこれです」
という全員に共通する一つの姿勢があるわけではないということです。
AさんとBさんとCさんでは、骨格が違います。
だから、
「良い姿勢はこれです」ではなく、「Aさんにとって自然な姿勢はこれです」
という考え方になります。
人によっては、少し猫背気味に見える人もいれば、反り腰気味に見える人もいます。
もちろん、すべての猫背や反り腰が良いと言っているわけではありません。
大切なのは、見た目だけで姿勢を良い・悪いと決めるのではなく、その姿勢が、その人の骨格に合っているかどうかです。
編集部
同じ競技をしていても、その人によって自然な動きが違うということですね。
研究チーム
そうですね。
骨格が違えば、その人にとって自然な立ち方や歩き方、動き方も変わるとHURECでは考えています。
低年齢の子どもについても、特に3歳、4歳くらいでは、自分の姿勢を意識的に作っているわけではありません。
それでも、その子の骨格にとって自然な立ち方、歩き方、動き方をしていることが多い。
私たちは、そうした動きを研究の参考にしてきました。
そしてもう一つが、トップ・オブ・トップのアスリートです。
トップレベルの選手は、極めて高いパフォーマンスを目指しています。
その中で、パフォーマンスを高めるためにも、できるだけ怪我をせず競技を続けるためにも、結果としてその人の骨格にとって自然な動きが保たれているケースが多いとHURECでは捉えています。
編集部
では、テーピングやサポーターの話と「その人に合った自然な動き」は、どのようにつながるのでしょうか。
研究チーム
HURECがこれまで見てきた中では、トップレベルのアスリートほど、テーピングやサポーターを常につけているケースは多くないように感じています。
もちろん、つけている選手もいますし、一時的に頼ることもあります。
ですから、
「トップアスリートはサポーターを使わない」
と言いたいわけではありません。
ただ、基本的には何もつけずに競技に取り組んでいるケースも多く見られます。
私たちは、その一つとして、テーピングやサポーターは体の一部を外から固定したりサポートしたりするものなので、その人の骨格にとって自然な動きから外れてしまう部分が出る場合もあると考えています。
もちろん、固定や保護が必要な時期には、それでいいと思います。
ただ、本来目指したいのは、
そこのサポートがなくても大丈夫な状態です。
その人の骨格に合った自然な動きの中で、全身が連動して負荷を分散できる。
HURECでは、テーピングやサポーターは必要なときには使いながらも、最終的にはそうした状態へ戻していくことが大切だと考えています。
編集部
つまり、外すこと自体を目的にするのではなく、その人に合った動きで競技できる状態を目指すということでしょうか。
研究チーム
そうですね。
今まさに怪我をしていて、固定しなければならない段階のアスリートに、
「今すぐ外したほうがいいですよ」
と言っているわけではありません。
必要なタイミングは当然ありますし、そこは慎重に判断する必要があります。
ただ、大きな方針としては、
サポーターやテーピングをしなくてもいい状態にする。
ずっと頼るものではない。
という考え方を持っておくことが非常に大切だと思っています。
そのためにも、一つの部位だけを見るのではなく、その人の骨格に合った動きができているのか、全身で負荷を分散できているのかというところまで見ていくことが大切だと考えています。
編集部
どのような使い方が続いている場合に、一度見直してみたほうがよいのでしょうか。
研究チーム
まず、怪我の状態によっては、一定期間テーピングやサポーターが必要になることがあります。
そこは自己判断ではなく、医師や医療専門職の判断を優先していただきたいと思います。
一方で、そうした治療上の固定とは別に、
「不安だから毎回つける」
「予防のために習慣的に使う」
状態が続いているのであれば、少し考えてみてもよいと思います。
「なぜ、自分はこれを必要としているんだろう」
と一度考えてみる。
「もっと強いサポーターに変えよう」
「テーピングの巻き方を変えよう」
だけではなく、
自分の体の動きそのものを見直してみる。
そこも大切だと考えています。

編集部
では、その人に合った動きを確認するために、HURECでは何を見ていくのでしょうか。
研究チーム
私たちは、一つの方法として、自分の骨格のタイプを一度見てみることをおすすめしています。
HURECでは、骨格の個体差を16種類の骨格動作タイプに分類しています。
自分がどのタイプなのか。
そのタイプにとって、どのような姿勢や動きが自然なのか。
そこを確認して、その人の骨格に合った動きへ戻していったときに、今感じている肘や膝、腰、足首などの不安感がどう変わっていくのかを見る。
それも一つの方法だと考えています。
もちろん、
骨格動作タイプが分かれば必ずサポーターを外せる
という話ではありません。
また、テーピングやサポーターを外せば怪我が良くなるという話でもありません。
大切なのは、必要な時期には使いながらも、最終的には外部からサポートしなくても、その人の骨格に合った動きで、全身に負荷を分散しながら競技に取り組める状態を目指していくことです。
一度、テーピングやサポーターの必要性を見直す
テーピングやサポーターは、必要な場面で使うものです。
一方で、
「不安だから毎回つける」
「予防のために習慣的に使う」
という状態が続いているのであれば、
「なぜ、自分はこれを必要としているんだろう」と一度考えてみることも大切です。
HURECでは、全員に同じ姿勢や動きを当てはめるのではなく、その人の骨格にとって自然な姿勢や動きがあると考えています。
サポーターを変える。
テーピングの巻き方を変える。
それだけではなく、
自分の骨格に合った動きができているか。
全身で負荷を分散できているか。
そこまで確認してみる。
それが、テーピングやサポーターに頼り続けている状態を見直す、一つの方法だと考えています。
監修者からのアドバイス

医療監修:高村 武光
はり師・きゅう師/連動性シニアトレーナー
現場で選手と向き合っていると、テーピングやサポーターが、競技を続けるために使われている場面を多く見ます。使うこと自体が悪いわけではありません。ただ、「不安だから毎回つける」「予防のために何となく使い続ける」という状態であれば、一度その使い方を見直してみてほしいと思います。
大切なのは、外すことそのものではなく、自分の骨格に合った自然な動きで、全身に負荷を分散できているかを確認することです。
骨格が違えば、自然な姿勢や動きも一人ひとり異なります。体の一部だけを見るのではなく、全身の関節や筋肉が連動しているか、どこか一か所に負荷が集まっていないかを見る。そのうえで、自分に合った動きへ戻していくことが、競技を続けるうえで大切だと考えています。
高校時代に腰椎分離症を経験し、リハビリをきっかけに医療の道へ。森ノ宮医療大学で鍼灸師(国家資格)を取得。サッカー・ソフトボール・テニス・パデルなど複数競技の日本代表を含むアスリートのトレーナーとして活動する一方、変形性股関節症・膝関節症など高齢者の症状にも対応。骨格の個体差にもとづく“連動性トレーニング”を修め、現行最上位資格「連動性シニアトレーナー」に認定される。医療専門職の育成も行う。

研究監修:伊藤 龍平
株式会社HUREC 代表取締役
医師・理学療法士・鍼灸師、トップアスリート指導者など身体の専門家で構成される研究団体HURECを組織し、10年以上にわたり骨格の個体差(先天的特質)を研究。その研究から「骨格動作タイプ」を16種類に体系化。各種競技のオリンピックアスリート、日本代表選手などからも多くの支持を受ける。

医学監修:烏山 司
スポーツ内科医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター
スポーツドクターとしてアスリートの内科的サポートに従事し、株式会社HURECの医学顧問を務める。自身も高校時代にソフトテニスでインターハイに出場するなど、スポーツに高い関心を持つ。フルマラソンは2時間34分(市民ランナー上位0.5%)で完走。
よくある質問
Qテーピングやサポーターは使わないほうがいいですか?
Aいいえ。HURECでも、テーピングやサポーター自体が悪いとは考えていません。 強い捻挫をした直後の固定や、十分な休養が取れない状況で競技に出場するときの保護など、必要になる場面があります。 怪我をしている場合は、自己判断で外さず、医師や医療専門職の判断も踏まえて使用してください。
Q怪我予防のためにテーピングをする意味はありますか?
A怪我の種類によって異なります。足関節捻挫では、ブレースやテーピングなどの外部サポートによって捻挫の発生リスクが低下したとする研究があります。 一方でHURECでは、「怪我が怖いから、とりあえず毎回つける」という状態を続けることが最終的な目標ではないと考えています。 必要な場面では使いながらも、その人の骨格に合った動きで、全身に負荷を分散して競技できる状態を目指すことが大切だと考えています。
Qテーピングやサポーターをずっとつけていると、どのようなことが良くないのでしょうか?
AHURECでは、人の体には本来、その人の骨格に合った自然な動きの中で、全身の関節や筋肉を連動させながら負荷を分散する機能があると考えています。 一方で、テーピングやサポーターは体の一部を外から固定・サポートするため、その人の骨格にとって自然な動きから外れてしまう部分が出る場合もあると考えています。 そのため、必要な時期には使いながらも、最終的には自分の骨格に合った動きで、外部からのサポートがなくても負荷を分散して競技できる状態を目指すことが大切だと考えています。
Q自分に合った動きは、どのように確認するのでしょうか?
AHURECでは、骨格の個体差を16種類の骨格動作タイプに分類しています。 自分がどのタイプなのか、そのタイプにとってどのような姿勢や動きが自然なのかを確認し、実際の競技動作や体の変化と照らし合わせていきます。 骨格動作タイプが分かれば必ずサポーターを外せるということではありませんが、なぜ特定の場所をサポートし続けているのかを考えるための一つの手がかりとして活用しています。
まずは、自分の骨格のタイプを
知るところから
今の身体の状態やお悩みをうかがったうえで、リスタートで何ができるかをお伝えします。
出典
研究資料
- Bellows R, Wong CK. The effect of bracing and balance training on ankle sprain incidence among athletes: a systematic review with meta-analysis. Int J Sports Phys Ther. 2018;13(3):379-388.
- Dizon JMR, Reyes JJB. A systematic review on the effectiveness of external ankle supports in the prevention of inversion ankle sprains among elite and recreational players. J Sci Med Sport. 2010;13(3):309-317.
HUREC資料
HURECアスリートチャンネル「テーピングやサポーターに頼りきりになっている人へ」


